台湾をめぐる冒険

前作、神馬笛をめぐる冒険からはや数年。今度は台湾・台北でのお話です。

カテゴリ:台湾 > 仕事関連

日本語は難しい。

前回の記事で紹介した、翻訳の仕事のアシスタント。

「俺日本人だから問題ねーよ」
なんて簡単に思っていた。これが難しい。

皆さんは成人用ビデオを見る時、その全ての会話を聞いた事があるだろうか。
面倒な会話のシーンなんてぶっ飛ばして、重要なシーンだけを見ているのではないだろうか。

インタビューなら問題はない。やり取りはほぼ決まっている。

ドラマの場合。
脚本家によって書かれ、監督によって演出されているであろうドラマ。
それが私を悩ませる。その作り込みの深さが私を悩ませる。
時に想像を超えるような、話の飛躍。
日常では考えが及ばない設定。
重要な部分へ近づけば近づくほど増える、ささやき。
そのすべてが私を混乱させ、完璧なリスニングから私を遠ざける。

同じ部分を何度も聞き直し、聞き取りをする。
聞き取れなければ、何度も同じシーンを見て監督の気持ちを考える。
私がこの作品の監督なら、どうするだろうか。
前後の動き、会話を確認する。
通常であれば、ここでどのような言葉を発するのか。


そんな事を考えていれば、
見れば見るほど、嫌になる。興奮なんてもちろんしない。

趣味を仕事にしてはいけない。
私は今、そう思う。


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その日、男はとあるビルの一室の前に立っていた。
そこでこれからどのような事が起こるのかを思案しているのは、30歳の男。
3ヶ月前から台湾に来て生活している。

彼の思案の理由、それは台湾における初めての経験。面接、だった。
しかし今日は一人ではない。今回の仕事の相棒と一緒だ。
今回、彼は脇役に過ぎない。ただのアシスタントとしての役割を果たすためにここにいる。
アシスタントの彼であるが、不要にも思える思案には理由があった。

誕生してから、はや数十年。日本でその競争は熾烈を極める業界がある。
成人用ビデオ業界。
そのコンテンツはもはや日本だけには留まらず、海外にも進出している。
それは現在彼が住む台湾でも同じであった。

日本の商品が氾濫し、女優は想像以上の人気をもつ。
日本のコンテンツを提供し、放送するテレビ局がある。
もちろんそれを成すためには必ず必要なものがある。翻訳。

日本語を聞き取り、中国語の字幕をつけていく。
それは容易な作業ではない。極めて難しい作業だ。誰でも出来るものではない。
そこで彼らはチームを組む事にした。
彼は相棒が日本語の聞き取りが出来なかった場合の、アシスタントだ。


そして面接が始まる。
翻訳を担当するチーフが語り始める。次第にその口調に熱が帯びる。
時に険しい表情、時には笑みをこぼしながら淡々と説明して行く。

中国語の面接は彼には聞き取る事が、出来ない。
しかし彼は確かに、その面接官の熱を感じ取っていた。彼と面接官の思いは同じだった。
「日本のビデオを愛する」
彼は異国の地で、熱く、真剣に、真摯に仕事を愛し、取り組む男の姿を見た。
それは、プロフェッショナルに働く男の姿だった。

「あなたにとってプロフェッショナルとは?」
彼にとって、それを面接官に訪ねるのは容易ではなかった。彼はその中国語が分からなかった。

”ぼくらは位置について〜、横一列でスタートをきった〜”


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